会員コラム06

 今月を担当するnupriです。新潟出身で、大学から北海道に来ています。定年を機に札幌に来て、その年に本会に入りました。栽培歴はそう長くはありませんが、実は小学校5年の時に遠い親戚の方からサボテンを何株かいただいて栽培していた時期があります。その頃は通信販売で愛知の業者からサボテンを買ったこともありました。でも、栽培技術はないに等しく、そのうち他のことに関心が移っていつの間にかサボテンたちも消えていました。それからうん十年で復活したわけです。

 本会に入ると、前会長の土門氏が「ハウスを持たなきゃだめだよ」みたいなことをおっしゃるので、私もついうかうかとハウスを建てるところまで行きました。確かに花もよく咲くようになり、生長もよくなったようですが、いかんせん暑がりの私としては締め切りのハウスが耐えがたいのです。よって春先から晩秋まで、強風のとき以外はサイドの巻き上げ部をある程度まで開放していますが、これが一部のサボテンには気に入らないみたいです。よって、そういったサボテンはいつの間にか消えていました。反面多肉植物にはうれしいところがあるようです。

【今秋のハウス。POを張り替えました】



【冬にはこのとおり。サイドの雪かき中】


 さて、私は実生もするのですが、昨年から原産地(フィールド・ナンバー)つきの実生には和名を使うのをやめています。たいした理由はないのですが、同じ学名でも原産地やフィールド・ナンバーの違いにより様々な顔があるのを知ると、一律に決まった和名を付けるのがためらわれるのです。おいおい、それじゃ和名の後にフィルド・ナンバーなりを付けとけばいいだろうと突っ込まれそうですが、それでも中にはその種にそぐわない和名もあったりするので、結局学名プラス原産地またはフィールド・ナンバーに落ち着いています。学名なら世界標準ですしね。和名でも昔からあるものにはうなずけるものも多いのですが、なんだかやっつけ仕事みたいなものには拒否反応が出てしまいます。

【実生苗には学名表記のみとしました。和名を付けないショップも出ていますね。例えばEchinopsis eyriesiiと書いてある苗をホーマックで見たことがありますが、これは「短毛丸」で通っていましたよね。隔世の感があります】


 さて、その学名ですが、これをどう読む(発音する)かがまた一大事です。よくラテン語なのだからそれに合わせた読み方をせよ、という説明がなされます。それに従うと、例えばcereusは「ケレウス」と発音するようです。ところが、私はこれを「セレウス」と読んでいました。だって、始めた頃のサボテン栽培書の竜膽寺 雄氏も、奥 一氏も、上原貴和氏もみんな「セレウス」派ですぜ。唯一「ケレウス」派は伊藤 芳夫氏でした。その後「ケレウス」と書く人が出てきましたが、もうすり込まれていますのでねえ。

 そのうち、各国で読み方はそれぞれだと言うことを本で知り、私は英語に合わせた読み方を取ろうと考えました。だって、英語は世界的な標準語のメジャーの一つで、しかもサボテンのある国の言語でもありますからね。さて、じゃあ英語ではcereusはどう発音するのかというと、語頭にアクセントがあって「スィーリアス」に近いものになります。なんだ、こりゃseriousと同じか、真面目な柱とはねえと思いつつ、ネットのDave's Gardenを見ると各属各種小名の読み方が検索できます。なんと'KER-ee-us'「ケーリーアス」となっているではありませんか。英単語としてのcereusと学名としてのcereusを分けているようです。ただ、普通の英単語であるこの語の呼び方まで書いてあるところを見ると、どうも普通の合衆国の人は「スィーリアス」と呼ぶんでしょうね。などと思っていたら、おっと英国で発行された『COLOURFUL CACTI AND OTHER SUCCULENTS OF THE DESERT (1974)』というEdgar LambさんとBrian Lambさんの書いた本の中にも発音の仕方が載っていまして、ここでは通常の発音である「スィーリアス」(記号が打てないので勘弁して下さい)でした。ということで、私としては英語に近く読むことにしたのです。

 次に園芸品種の呼び方ですが、これは作出国の呼び方をアルファベット表記しています。例えばConophytumの「御所車」は、作出者の田中氏が付けたもので"Gosho-guruma"のように書かれます。ならば英米で作られたものには英語で読むのが正しいのではないでしょうか。おなじConophytumで"Mabel's Milk-man"があります。これはS. Hammer氏が作出した品種で氏が命名していますが、「メイベルズ・ミルクマン」と読むべきものです。なのに多くのカタログや書籍では「マーベルズ・ミルクマン」となっており、ご丁寧に"Marbel's Milkman"としているものまであります。こりゃ、またどういうわけだ、などと歌っている場合ではないですね。 

【御所車。巻花ですが花を撮っていなかった!】

【「君の名は?」「Mabel's Milkmanだよ。」】

このように、辞書を引く手間を惜しむことでできたミスは音楽の世界にもあります。例えばMiles Davisのアルバム「ビッチェズ・ブリュー "Bitches Brew"」はどうでしょう。まず、名前の読み方からして「マイルス・デイビス」が怪しいのですが、これは日本語の

発音にも絡むので、まあ大目に見ておきますか。本来なら「マイルズ・デイヴィス」くらいになるでしょう。で、アルバム題名です。bitchは使われる場面からして日本の中・高の英語教科書では取り上げられないと思うので、まあこれは読めなくともよしとしましょう。でもbrewはいけません。よく発音問題などで要注意語の一つに挙げられるやつです。「ブルー」ですよ。ということで「ビッチズ・ブルー」となるはず。こんなことをもう40年も前に評論家の中村とうよう氏が書いていたのですが、頑迷なジャズ界はこれを無視して、現在も表記を変えておりません。という私も、中村氏の論を読むまでは全然気づきもしませんでした。英語を生業にしているくせになんたる無様さであったでしょうか。


【受験英語は大事だよなあ】


 話が長くなりました。こんなことを書いていると、なんだか面倒くさいやつだなあと思われる方もいらっしゃるでしょうが、決して人様に押し付けるようなことはいたしませんのでご安心を。さて、うっとうしいCOVID-19のために2020年はうれしい年とは言えませんでしたが、来年はどうでしょうか。良い年になることをお祈りします。  

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